実質賃金

実質賃金という言葉を聞いたことがありますか?
日々の生活で物価が上がる一方、収入が増えないと感じる方も多いでしょう。
収入が増えても意外と自由に使えるお金は増えないと思っているかもしれません。
そこで今回は実質賃金についてお話していきます。

実質賃金とは


2024年4月の毎月勤労統計調査の結果によると、基本給は前年同月比で2.3%増加しました。
この伸び率は実に29年6か月ぶりの高い数字です。
企業の間では賃上げのムードが広がっています。
皆さんは給料が上がったことで、生活が少し豊かになったと感じているでしょうか。
多くの人はそうは感じていないかもしれません。
なぜなら、基本給が上昇している一方で、実質賃金は0.7%減少しているからです。

実質賃金という言葉はあまり馴染みがないかもしれないので簡単に解説します。
実質賃金とは、あなたが受け取る給与の額面だけでなく、物価の変動を考慮した「実際に使えるお金」のことを指します。
つまり、物価が上がると同じ給与額でも買えるものが減るという現象を表しています。

生活が楽になったと感じていないのは、物価の上昇が給与の増加を上回っているためです。
3月の実質賃金は前年同月比で2.1%減少しており、それよりは改善していますが、依然としてマイナスの状況です。

給与が増えても使えるお金は増えない?


では、なぜ給与が上がっても実質賃金がマイナスになるのでしょうか。
これは前述の通り、物価の上昇率に給与の上昇が追い付かないためです。
たとえば、あなたの給与が2%上がったとしても、同時に物価が3%上がれば、実質的には1%の減少ということになります。

これをもう少し身近な移動のスピードに例えてみましょう。

例えば皆さんが一生懸命走ったら、自分ではかなり前に進んだと感じるはずです。
ところが、横を走り抜ける自動車と比べるとだいぶ遅いスピードですね。
あなたが走ったのと同じ時間、あなたより早いスピードで車が走ったとしたら、当然車の方があなたより前にいます。
つまり、車から見るとあなたは後ろに下がったように見えるということです。
あなたも車と同じ速さで走ることができて、はじめて車は止まって見えます。
車が前に進む速さが物価の上がる速さ、あなたの給料の増え方が走る速さだとすると、車から見て相対的に遅いスピードで走っている間は遅れていくということです。
これは使えるお金がどんどん減っていく、つまりどんどん貧しくなっていくという意味です。


物価の上昇に備える


今までの日本は物価が上がらない時代が長く続いてきました。
先ほどの例でいえば、自動車が止まっているかバックしているときもあったので、自分が少しでも前に進んでいれば相対的に前に進めていたのです。
ところが、様々な要因で物価が上昇し始めた今では、自動車がエンジンをかけ、アクセルを踏んでいる状態です。
自分自身が前に進まなければ置いて行かれてしまうということです。

日銀の物価上昇率の目標は年間平均2%です。
その目標が達成され続けるとするならば、少なくとも前年と同程度の暮らしを維持するためには、毎年2%ずつ収入を増やしていく必要があります。
会社からの給与だけでそれが達成できないのであれば、その他の手段で収入を得ていく方法を考える必要があるかもしれませんね。
また、収入だけではなく、資産についても同じことが言えます。
貯金などの資産も毎年2%ずつ増えていかないと実質的に目減りしているということになります。
投資信託や株はお金が減るリスクがあるから怖い、銀行にお金を預けていれば減らない、という意見を耳にすることがありますが、本当に正しいのかどうか考える必要がありますね。

会社からの収入だけで十分なのか、資産構成はいまの状態が最適なのか、この先の人生計画に十分なだけのお金が確保できるのか。
様々な状況を加味して、長期的なプランを立て状況の変化に応じて計画を修正していく、というのがこれからますます必要な世の中になっていくかもしれません。

まとめ


実質賃金は、給与と物価の関係を考える上で非常に重要な概念です。
収入が上がっても物価の上昇に追いつかないと、実質的な生活水準は下がってしまいます。
このような状況に備えるためには、長期的な計画と定期的な見直しが必須です。
将来が不安な方は一度ライフプランの相談をしてみてはいかがでしょうか。

【参考資料】
厚生労働省:毎月勤労統計調査