序文
投資という言葉を聞くと、株やFXのように値動きが激しいイメージを思い浮かべる人も多いかもしれません。
しかし実際には、より安定的で身近な投資の仕組みも存在します。
その代表例が「REIT(リート)」と呼ばれる不動産投資信託です。
そこで今回は、REITの基本についてお話していきます。
REITとは?株式投資や不動産投資との違い
REIT(リート)とは、多くの投資家から集めたお金を使ってビルやマンション、商業施設などの不動産を購入し、その運用益を投資家に分配する仕組みのことです。
簡単に言えば、みんなでお金を出し合い、大きな不動産を共同で持ち合うイメージです。
株式投資では企業の株を買って会社の成長や利益に期待しますが、REITの場合は不動産から得られる家賃収入や売却益が収益の源泉となります。
不動産投資との違いは、現物のマンションや一戸建てを自分で購入する必要がない点です。
個人で不動産を買う場合には数千万円もの資金やローンが必要ですが、REITであれば数万円から投資が可能です。
さらに、不動産の管理や入居者対応といった手間は専門の運用会社が担ってくれるため、投資家自身が労力をかける必要はありません。
日本のREIT市場(J-REIT)は2001年に始まり、2025年1月時点で時価総額は約17兆円に達しています【日本取引所グループ。
これは、多くの投資家が不動産投資をより手軽に行える仕組みとして支持していることを示しています。

REITのメリット―安定収入と分散効果
REITの大きなメリットのひとつは、安定的な収入が期待できることです。
法律上、REITは得られた利益の90%以上を投資家に分配すると税金が優遇されます。
そのため、利益の大部分を定期的に「分配金」という形で得られることが多いです。
例えば、大規模なオフィスビルやショッピングモールから入る家賃収入が分配の原資となり、投資家はその恩恵を享受できます。
もうひとつのメリットは、分散投資がしやすい点です。
ひとつのREITが複数の不動産を保有しているため、もし一部の物件で入居者が減っても、他の物件で収益が補える仕組みになっています。
個人でアパートを一棟購入した場合、空室が出ると収入に大きな影響がありますが、REITは数十から数百の物件に分散されているため、リスクが抑えられます。
こうした特徴から、REITは「不動産投資を小口化し、投資信託のように誰でも参加できる形にしたもの」と表現されることが多いのです。

REITのリスク―価格変動と不動産特有の課題
もちろん、REITには注意すべきデメリットもあります。
まず挙げられるのは価格変動リスクです。REITは証券取引所に上場しているため、株式と同じように市場で売買されます。
そのため、不動産市況や景気の動向、金利の変化などに応じて価格が上下します。
たとえば、金利が上昇すると不動産投資の魅力が相対的に下がり、REITの価格も下がる傾向があります。
また、不動産ならではのリスクとして災害や空室があります。
地震や台風といった自然災害で建物が被害を受ければ、収益は減少しますし、商業施設やオフィスビルで空室が増えれば、家賃収入も減少します。
2020年の新型コロナウイルス流行時には、ホテルや商業施設を中心としたREITの収益が落ち込み、価格も大きく下がった事例があります。
つまり、REITは現物の不動産を直接所有するよりは小口で分散できるものの、不動産市場全体の影響を受けやすい投資であることは理解しておく必要があります。

まとめ
REITは、不動産投資を小口化して誰でも手軽に参加できるようにした仕組みです。
安定収入や分散投資のメリットがある一方、市況や災害によるリスクも存在します。
投資を始める際には、メリットとデメリットの両方を知ったうえで判断することが大切です。
まずは選択肢を知ることが、判断をするための第一歩になります。
【参考資料】
一般社団法人投資信託協会:J-REITを学ぼう