キャッシュレス化が進んでいる時代ですが、紙幣デザインの変更は話題になります。
普段は知らないと損する制度などを取り上げていますが、たまには箸休めも必要でしょう。
お金に関する雑学や小話は知っていると会話のネタになりますね。
ということで今回は日本の紙幣についてお話していきます。
新しい紙幣の発行
新紙幣の発行に関する話題は2024年4月に日銀が紙幣デザインを後悔した際に盛り上がりました。
北里柴三郎を1,000円札、津田梅子を5,000円札、渋沢栄一を10,000円札に新しい顔として描いて発行します。
ちなみに日本のお金のデザインの最終決定権は財務大臣が持っています。
通貨行政を担当している財務省、発行元の日本銀行、そして製造元の国立印刷局の三者で協議を重ね、日本銀行法によって財務大臣が決定することになっています。
お札の肖像画は基本的には右側に配置されていますが、実は過去に一度だけ左側に配置されたことがあります。
ところがお金を勘定する際に左手でお札を持ち肖像と向き合うようにして数えるのが一般的であるため、このお札が発行された当時、「十円札だけ肖像が確認しにくく不便」との声が寄せられたことから肖像画左に配置されることはなくなったそうです。
そもそもお札に肖像画利用される理由は実は2つあります。
1つめは偽造防止のためです。
人の顔を見分けるということに私たちはとても慣れているため、肖像画がほんの少しでもぼやけて居たりずれていたりすると違和感を持ちます。
そのため、偽造されたお金が流通してもすぐに気が付けるように肖像画が使われています。
ちなみに今回は約20年ぶりのデザイン変更となりましたが、世界初の新しい技術が取り入れられています。
それが3Dホログラムです。肖像画の顔の向きが変わって見えるそうなので、手に入れたらぜひ試してみてください。
2つめの理由はそのお金に描かれている人に親近感を持ってもらうためです。
世界中のお札に様々な人物が描かれていますが、その国で良く知られている政治家や文化人、有名人などがほとんどです。
これは普段から目にするお金に顔を載せることでその人物の業績などを再認識してもらうことが狙いです。
人物の選定基準は明確な決まりはないそうですが、国民から尊敬されて日本を代表するような人物であるとともに、簡単に複製できずに人の目をひく特徴のある顔であることもポイントです。
肖像画の人物
新しい紙幣に登場する3人の業績を簡単におさらいしましょう。
1,000円札の北里柴三郎は近代日本医学の父と呼ばれる微生物学者、教育者です。
熊本県の出身で18歳にて現在の熊本大学医学部となる古城医学所兼病院、現在の東京大学医学部である東京医学校で医学について学びます。
卒業後は内務省衛生局に勤務、ドイツのベルリン大学に留学を経て世界初の破傷風菌の培養に成功し世界を驚かせました。
帰国後は伝染病研究所や慶應大学医学部、日本医師会などの医学団体などを設立し、社会活動も積極的に行いました。
今回のお札に使用される肖像画は、風格や品位があり、学者としての地位が確立し、働き盛りで充実した様子が伺えるため、50歳代の写真を参考として描かれたそうです。
5,000円札の津田梅子は日本の女子教育家で現在の津田塾大学である女子英学塾の創設者です。
東京都出身で6歳の時に日本最初の女子留学生として岩倉遣外使節団と共に渡米し、11年間アメリカで生活します。
17歳で帰国するも、女性の地位を高めるために自分自身の学校を作りたいと考えて再度留学します。
そして現在のお茶の水女子大学で教鞭をとったのち、女子英学塾を創設します。
今回のお札の肖像画は、女子英学塾を創立した年齢であり、教育者としてのキャリアが確立した年代である30歳代の写真を参考として描かれました。
10,000円札の渋沢栄一は近代日本の資本主義の父と呼ばれる日本の実業家です。
埼玉県出身で江戸時代末期に農民から武士に取り立てられ、徳川慶喜の弟である徳川昭武のお供としてパリ万国博覧会や欧州諸国を訪問します。
帰国後は静岡に商法会所を設立した後、明治政府に招かれて大蔵省の官僚として新しい国作りに深く関わります。
退官後は実業界に転じ、生涯に約500社の企業の設立、約600の教育機関や社会公共事業、研究機関などの設立や支援に尽力しました。
今回のお札の肖像画は、70歳の古希のお祝い時に撮影された写真を参考としているものの、各方面で活躍されている躍動感や若々しさを表現するため、60歳代前半にリメイクされているそうです。
まとめ
キャッシュレス化が進行して現金を手にする機会は減りつつあります。
ただ、お金には単なる決済手段としての側面以外にも役割があります。
国として大切にしたい文化や歴史の物語、そして最新の技術の結晶でもあります。
新しい紙幣が発行されるまで約1年、楽しみに待っていてください。
【参考資料】
国立印刷局:「新しい日本銀行券特設サイト」
日本銀行:「お金の話あれこれ」