貯めすぎもリスク?使う時期から逆算する資金計画

「将来が不安だから、できるだけお金を貯めておこう」と考える人は多いでしょう。
確かに貯蓄は安心につながりますが、実は“貯めすぎ”がリスクになることもあります。
お金は使うためにあるにもかかわらず、使いどころを考えないまま貯め続けてしまうケースも少なくありません。
そこで今回は「使う時期から逆算する」という視点で、資金計画の考え方をお話していきます。

「お金は多いほど安心」は本当?貯めすぎの落とし穴


お金は多いほど安心、という考え方は一見正しく思えます。
しかし、必要以上に貯めることで、今の生活を我慢しすぎてしまう人もいます。
たとえば、旅行や学び直し、家族との時間に使えるはずのお金を、「もったいないから」と使わずに過ごしてしまうケースです。
総務省の家計調査によると、高齢世帯の中には多額の金融資産を持ちながら、十分に使わないまま亡くなる人も少なくないとされています。
こうした場合、結果として相続税の対象になり、「自分のために使うつもりだったお金」が税金として消えてしまうこともあります。

そこで大切なのが、資金計画を立てるときに「いくら貯めるか」ではなく、「いつ使うか」から考えることです。
お金は将来の不安を減らすための手段であり、ゴールがなければ貯め続けること自体が目的になってしまいます。
使う時期や目的を先に決めることで、「今は使っていいお金」「将来のために取っておくお金」の区別がつき、心にも余裕が生まれます。

人生でお金を使うタイミングと、バランスの取り方


人生の中でお金を使うタイミングには、ある程度の傾向があります。
代表的なのは、子どもの教育費、住宅購入、老後の生活費です。
文部科学省の調査によると、幼稚園から大学まですべて公立でも教育費は約540万円、すべて私立の場合は約1,800万円かかるとされています。
また、総務省の家計調査では、老後の生活費は年金だけでは不足し、月数万円程度の取り崩しが必要になる世帯が多いことが示されています。

一方で、人生は将来だけでなく「今」も大切です。
の満足をすべて犠牲にして将来の安心だけを追い求めると、後悔が残ることもあります。
そこで意識したいのがバランスです。
たとえば、将来に備える貯蓄や投資を続けつつ、毎年「使っていいお金」をあらかじめ決めておく方法があります。
こうすることで、使うことへの罪悪感が減り、計画的にお金を楽しむことができます。

家族と話さないことで起こる問題と、お金の本来の役割


お金の使い方や残し方について、家族と話し合っていないと問題が起こりやすくなります。
たとえば、「親は将来のために使わずに貯めていたつもりだったが、子どもは早く使ってほしかった」といった価値観のずれです。
また、相続の場面では「なぜこんなに貯めていたのか」「どう使うつもりだったのか」が分からず、家族が悩むこともあります。

お金は単なる数字ではなく、人生を豊かにするための道具です。
安心して暮らすため、経験を積むため、人とのつながりを深めるために使われてこそ価値があります。
だからこそ、「いくら残すか」だけでなく、「どう使いたいか」「どんな人生を送りたいか」を家族と共有することが大切です。
お金の話をすることは難しいことではなく、将来の安心と満足につながる前向きな行動なのです。

まとめ


貯蓄は大切ですが、貯めすぎることで今の生活を犠牲にしてしまうこともあります。
資金計画は「いくら貯めるか」ではなく、「いつ・何のために使うか」から考えることが重要です。
将来の安心と今の満足のバランスを意識し、計画的にお金と付き合いましょう。
お金を上手に使うことが、人生をより豊かにする第一歩になります。

【参考資料】
総務省:「家計調査年報」2024年
文部科学省:「子どもの学習費調査