養育期間標準報酬月額特例

子育て期間中は出産前と比べると生活が一変します。

働く時間が短くなると、今のお財布事情だけではなく将来的な年金の受取額にも影響してきます。

ところが将来への影響を小さくする制度があるのをご存知でしょうか。

そこで今回は養育期間標準報酬月額特例についてお話していきます。

 

出産・育児期間中に活用できる制度


出産や育児期間中において活用できる制度はたくさんあります。

支出を減らせるという観点でいえば、産前6週間や産後8週間の社会保険料の免除や、育児休業期間中の社会保険料を免除されたりします。

また、お金を受け取れる制度であれば出産育児一時金育児休業給付金があります。

これらは利用されている方も多く、広く周知されている制度ですね。

ところが養育期間標準報酬月額の特例というのはあまり知られていないようです。

 

厚生年金の受取額


これは簡単に説明すると、子育て中にフルタイムで働くのが難しい親が収入が減ってしまった場合でも、将来的な年金受取額を減らさないようにするための制度です。

そもそも厚生年金の受取額というのは、標準報酬月額等を用いて計算されます。

厳密には異なりますが、理解しやすくするためにここでは標準報酬月額=お給料として話をすすめましょう。

将来的に受け取れる年金の額は、毎月のお給料が高ければ高いほど増え、低ければ低いほど減ってしまいます。

つまりなんらかの原因で育児期間中にお給料が減ってしまうと、将来受け取れる年金額も減ってしまうということになります。

それを防ぐことが出来るのがこの養育期間標準報酬月額の特例という制度です。

 

養育期間標準報酬月額特例の対象


養育期間標準報酬月額特例の対象となる条件は以下の通りです。

・3歳未満の子を養育する被保険者または被保険者であった者

・養育期間中の各月の標準報酬月額が、養育開始月の前月の標準報酬月額を下回る場合

実際にどういった人が当てはまるのかをあげてみます。

まずはわかりやすい例として、出産前にフルタイムで働いていて、産休・育休を取得し、育休明けに時短勤務で復帰したお母さんです。

フルタイムから時短勤務になっているので、お給料が減っているイメージがしやすいですね。

 

また、出産前に退職をしていた場合でも1年以内であれば対象になります。

出産を機に退職し、出産後に別の職場で働き始めたものの以前の職場よりお給料が下がったお母さんもこの制度を適用できます。

もちろん女性に限らず、出産を機に時短勤務になったお父さんも対象になります。

 

さらにいうと時短勤務をしていなかったとしても対象になる場合があります。

例えば子供が産まれる前は残業が多くてお給料が高かったものの、育児期間は定時退社が増えた場合です。

子供を保育園にお迎えに行く機会が増えたり、我が子の顔見たさ仕事を頑張った結果、残業代分のお給料が下がっていれば対象になる可能性があります。

 

他には少し専門的な話になりますが、標準報酬月額には通勤手当や住宅手当も含まれます。

そのため、出産を機に会社の近くに引越をして通勤手当が減ったり、家を建てたことによって今まで支給されていた住宅手当が削減されたりした場合も対象となります。

このあたりは勤務先によってルールが異なるため、担当部署に確認してみるのが良いでしょう。

 

対象となる期間は、3歳未満の子の養育開始月、つまり誕生日のある月から養育する子の3歳の誕生日のある月の前月までです。

最初からこの制度を知っていて申請した方は3年分の恩恵を受けることが出来ます。

もし仮に知らずに過ごしてしまった方でも過去にさかのぼって申請することが出来ます。

申請日の前月までの2年間分についてはみなし措置が認められるようになっているので、子育て中の親御さんたちはぜひ一度チェックしてみてください。

 

申請の方法


この標準報酬月額の特例を申請するのは難しくありません。

用意するものは

・戸籍謄本または戸籍記載事項証明書

・住民票の写し

・マイナンバーカード

・養育期間標準報酬月額特例申請書

の4点です。

 

これらを準備して勤め先に提出するだけで完了です。

実際に受け取れる厚生年金の金額は諸条件によって異なるため正確な数字はここでは算出できませんが

仮に育児期間の収入減によって、将来受け取れる年金額が約2万円減ってしまうとしましょう。

人生100年時代と言われる今、年金を30年間受け取るとしても約60万円の違いになります。

将来的に収入を年金に頼る状態になっての60万円の差は大きいのではないでしょうか。

将来の自分に向けて今のうちにできる対策はしておいてあげるのが得策でしょう。

 

まとめ


将来的に受け取れる年金額が増える制度についてお伝えしました。

知らずに利用していない制度や知識がないばかりに受け取っていないお金はもったいないです。

そんなもったいないを徹底的に減らすことで、日常の生活で我慢をせずともお金が貯まるようになります。

自分ではよくわからない、という場合は相談してみてくださいね。

【参考資料】
日本年金機構:「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置
同:「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置を受けようとするときの詳細説明
同:「標準報酬月額の対象となる報酬とは何ですか
厚生労働省:「公的年金シミュレーター使い方ホームページQ&A