相続というのは多くの人が人生において数回は経験するものです。
ただしその一方で、経験する際には余裕が無い状況であることも少なくありません。
事前に少しでも知識があれば、そんな状況でもより良い対応が出来ることがあるでしょう。
そこで今回は相続についてお話していきます。
相続とは
相続とは、故人が死亡した場合にその人が持っていた財産上の権利義務を残された人に承継させる制度のことです。
相続においては亡くなった人のことを「被相続人」といい、被相続人の財産を引き継ぐ人のことを「相続人」といいます。
そのためすこし難しい表現をすると、相続とは被相続人から相続人に対する財産上の権利義務の承継ということになります。
相続の開始
相続が開始されるのは故人が死亡したときです。
被相続人が死亡した時点でその人が持っていた財産が相続人のものになります。
また、この死亡というものには失踪宣言という制度によるものも含まれます。
この失踪宣告というのは、生死不明の人に対して法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度のことです。
失踪は普通失踪と危難失踪の2種類に分けることが出来ます。
普通失踪とは、不在者の生死が7年間不明のときにその7年間が満了した時点で死亡したとみなされる制度です。
一方で危難失踪(特別失踪)とは、戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇することです。
この場合は危難が去った後その人の生死が1年間不明だった場合に、その危難が去った時点で死亡したものとみなされます。
この「危難が去った時点」というのは個別の事例ごとに判断されますが、ほとんどの場合では危難に遭遇した時と危難が去った時は結果として同じになるようです。
この失踪については2種類とも、利害関係人が請求することで家庭裁判所から宣言されます。
なお、失踪宣告を受けた人の生存が判明した場合には、家庭裁判所は失踪者本人又は利害関係人の請求により失踪宣告を取り消すことになります。
相続によって承継されるもの
相続によって引き継がれるものは、前述の通り被相続人の財産上の権利と義務です。
ここでいう権利というのが一般的に財産と呼ばれるもので、土地や建物、預貯金や株式、貴金属や美術品などの他、著作権などの知的財産権も含まれます。
一方で義務とは住宅ローンなどの借入金や未払いになっていた水道光熱費などのお金のことです。
権利というのはプラスの財産、義務というのはマイナスの財産というイメージを持っておけば良いでしょう。
ただし、他人に譲ることが出来ないその人にだけ与えられた権利については相続されません。
例えば資格や特殊な技能、年金受給権などです。
これらを難しい言葉では被相続人の一身に専属していたものといいます。
相続開始の場所
相続開始の場所については、被相続人の住所になります。
これはつまり死亡した人が最終的に住んでいた場所で諸々の手続きが確定されるということです。
ここでいう手続きとは相続税の納税や相続の放棄の手続き、相続に関する訴訟などですね。
例えば親が北海道に住んでいて亡くなった場合に、子供達がそれぞれ東京、大阪、福岡に住んでいたとしましょう。
相続税を支払うのは各地に住んでいる子供達ですが、納付先は親が最終的に住んでいた場所を管轄する税務署になります。
まとめ
相続が発生するタイミングでは冷静でいられないこともあるでしょう。
備えあれば憂いなし、転ばぬ先の杖などというように事前に準備をしておくことは大切です。
全てを覚えている必要はありませんが、頭の片隅にでもなんとなく残っているのといないのとでは違いがあります。
具体的な相続の条件などについてもこれから少しずつ知っていきましょう。
【参考資料】
民法第30条「失踪の宣告」
同31条「失踪の宣告の効力」
同32条「失踪の宣告の取消し」
同882条「相続開始の原因」
同883条「相続開始の場所」
同896条「相続の一般的効力」
国税庁タックスアンサーNo.4205「相続税の申告と納税」
国税庁税務大学校講本「相続税法(令和4年度)」P121民法の相続制度の概要